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2013年4月30日 (火)

真・MFC千夜一夜物語 第42夜 アクチュエータの孤独な戦い

前回お話しした「差圧は同じでも、二次圧が大気圧以上になる条件でMFC(マスフローコントローラー)を使用される場合は、ハンチングによる制御不良、バルブが閉まらず出流れによる低設定域の制御不良等の問題が生じる現象」に関して、もう少し掘り込んでお話しましょう。

 この現象の原因となるのは、実はバルブを動かすアクチュエータです。 

 MFCのアクチュエータはあらかじめリフト量(移動量=バルブ開度と考えて下さい)は決められています。そのリフト量を全部使って流量制御するのは、ごく稀な事です。なぜならばMFCのバルブは想定される最低の差圧でもフルスケール流量を流せるように調整されているからで、この差圧が大きくなればなるほど、同じリフト量でも流量は増加しますから、設定流量を保つためにはどんどんバルブを小さな開度にしていく必要があります。ですが、開度を小さくするのにはおのずと限界がきてしまい色んな問題を発生させます。

 では、差圧が最大動作差圧内なら、こういった問題は起きないかというとそれは、実際のアクチュエータが受ける圧力はどうなっているのか?によって左右されます。下図で仮に1次圧:0.7MPa2次圧:0.4MPaの差圧:0.3MPa条件に置かれたバルブタイプが異なる2種類MFCを例にとってご説明します。

130430_02

 現行MFCのバルブ構造には大きく分類すると2つありまして、Type Aのような絵は、ソレノイドアクチュエータタイプのMFCをご説明したときの絵に近似していると思います。このタイプのバルブ形式はポペットバルブというオーソドックスなもので、差圧を生むオリフィスの上流側にガスに接してアクチュエータが存在しています。その為、一次圧が高くなっても二次圧がその分高くなり差圧が維持されれば、アクチュエータにかかる圧力は一定です。

  ところがType Bですと、ちょっと様相が異なります。オリフィスの下流にダイヤフラムに仕切られたアクチュエータがあることが特長です。ここではアクチュエータが常にダイヤフラムに仕切られて大気圧雰囲気に存在していますので、二次圧がどれだけになろうと、単純に一次圧と大気圧の差がアクチュエータの受ける圧力となってしまいます。図の例ではAではアクチュエータが相対する圧力は0.3MPaに対して、Bでは同じ圧力条件でも0.7MPaかかってしまうのです。

 アクチュエータにとって正面切って戦わなければいけない圧力が実際にこれだけ違うと、表面上の差圧条件は同じでも、MFCの制御動作に差が生まれるのは当然ですね。カタログの圧力仕様の裏にあるMFCの構造にも目を向けていただけると、上手な使いこなし方がご理解いただけるかと思います。

ここを押さえて頂いた上で、次回は不適切な圧力条件で発生する、ハンチング、出流れといった不具合のメカニズムの説明をさせていただきます。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月26日 (金)

真・MFC千夜一夜物語 第41夜 MFC(マスフローコントローラー)の動作差圧に関する誤解


 今回は引き続きMFC(マスフローコントローラー)の圧力にまつわるお話です。

前回は耐圧のお話でしたが、今日のお話は「動作差圧」と呼ばれる性能表記のお話をさせていただきます。

 どうもMFCは圧力に関する性能表記では色々誤解を呼んでいる部分があるようです。

前回「MFCは内蔵する絞り部の圧力損失を可変し、結果流量を減らす量を制御しているものであり、自身で流量を創りだすことはできない」というお話をさせていただきました。

動作差圧というのは、まさにその事を表現したスペックなのです。

 「これだけの流量を制御するためには、MFC内部で最大ここまでの圧力損失を作らなくてはいけないので、他の配管抵抗を加味いただいた圧力設定でガスを供給してあげてくださいね!」という意味です。

例えば一般的なF.S.5SLM以下のMFCならば 「一次圧:49kPa294kPa/二次圧:真空~大気圧」という表記がカタログの仕様表にあります。この場合このMFCの最低動作圧は、二次側圧力が大気開放条件で一次側圧力49kPaと言えます。

では、「最低動作“差圧”は常に49kPaと考えればいいのかな?」とお客様から質問されたとしたら、答えは「YES」でしょうか?

 その答えは「No」です。

下図で見てみましょう。先ほどの条件のMFCは、一次圧(P1)49kPa/二次圧(P2):大気圧で動作しますが、一次圧(P1)749kPa/二次圧(P2)700kPaで同じ差圧(ΔP):49kPaを再現しても正常な制御は難しくなってしまうことがあるのです。

130426_01

 

 「どちらも差圧は49kPaで同じだから、動くはずだろう?」という声をよく聞きます。

でも、先ほどの圧力条件をよく読んでみて下さい。

一次圧:49kPa294kPa二次圧:真空~大気圧

 そう、特に最近の製品は、動作圧力条件を二次圧は真空から大気までに制限した表記をしているモデルが多いのです。従って例え差圧は同じだけ取れていても、二次圧が大気圧以上になる条件で使用される場合は、ハンチングによる流量制御不良、制御バルブが閉まらず出流れによる低設定域の制御不良(出流れ)等の問題が生じる可能性があります。

購入したMFCがまともに制御しない!などという問題を避けるためにも、前もって使用する圧力条件をメーカーに提示して機種選定していただく必要があるのです。

こういった現象が起きる原因として、MFCのバルブ構造が密接に関係してきます。これについての詳しいお話は次回お話します。

今回は「MFCの必要動作差圧というのは、単に絶対的な差圧の値だけではなく、MFCの二次側圧力に左右されることがある」という事をお話しておきます。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月25日 (木)

真・MFC千夜一夜物語 第40夜 MFC(マスフローコントローラー)の耐圧に関する誤解

今回は大流量MFC(マスフローコントローラー)のお話から少し離れて圧力のお話です。

・・・と、言いながら実は密接な関係があるのはこの物語によくあるパターンです。

 MFCユーザーの認識で結構多い誤解があります。

 「MFCはこちらが欲しい流量を必ず供給してくれる」

 こういった「MFCは万能で全てお任せ」的に捉えておられる方がおられますが、これは間違いです。

 この誤解の背景には「MFCはポンプに似た流量を作り出すもの」という間違った認識があるのではないか?とDecoは思っています。

真実のMFCの姿は、今までもこの物語でご説明してきましたが、

「MFCは内蔵する絞り部の圧力損失を可変し、結果流量を減らす量を制御しているもの」です。

決してMFC自身で新たに流量を創りだすことはできません。

 故に大流量を流す必要がある場合は、MFCを含むガス供給系のトータル圧力損失を上回る圧力で、ガスを供給していただく必要が生じます。また供給圧力はMFCの後段の圧力にも左右されます。大流量用途の場合、出口側が真空や大気開放ではなく、ある程度の圧力になるケースがほとんどだからです。そうすると当然その分だけ、ガス供給側の圧力を更に上げていただく必要が生じます。

  このように圧力を上げていくと、MFCへの供給圧力が1MPaという高圧ガスの領域に入ってきてしまうことも多々あります。ところがMFCの耐圧はどうかといいますと、実は一般的な微少流量用MFCのほとんどが耐圧表記は1MPaなのです。一般工業用途で大流量モデルを積極的に展開している一部のメーカー(Brooks社やBrokhorst社、Hasting)になりますと、さすがに流量範囲:100L/min1,000L/min で最高使用圧力6.8MPaというラインナップが出てきます。

ここで気をつけなくてはいけないのは、微少流量をメインにしている国産メーカーさんにも100200Lクラス大流量対応製品がありますが、その耐圧は1MPaという製品もあることです。これはベースになる技術がそもそも微少流量用だということで、前述のような大流量モデルを得意とするメーカーさんとはアプローチ自体が異なるからです。機種選定では十分に気をつけていただく必要があります。

  それとよく勘違いされているのが、動作圧力と耐圧の関係です。

「耐圧が1MPaだから、そこまで供給圧をあげても動作する」と誤認識されている事があります。

 最大使用圧力(最大動作圧力とも表記)は、「それを超える圧力で使用すると仕様を満たす動作が保証されない圧力上限」の事です。

 それに対して耐圧はあくまで純粋に「それを超える圧力で使用すると破壊される可能性がある圧力上限」という意味です。

 カタログで耐圧が最大動作圧力より高く定義されているがメーカーもあれば、同値のメーカーもあります。混同して使用されると、流量制御ができないばかりか、大きなトラブルを起こす可能性もあります。

くれぐれも各メーカーにご確認くださいね!

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月22日 (月)

真・MFC千夜一夜物語 第39夜 Decoの恐怖体験をお話しましょう~後編

前回に続き大流量MFC(マスフローコントローラー)にまつわるDecoの恐怖体験と失敗談です。

水素(H21000SLMクラスのMFCの不調を確認に行ったDecoは、流し始めに水素が大量に流れてしまい、それによる配管鳴りがまるで地鳴りのような轟音として居室に響き渡る・・・という恐ろしい体験をしました。MFCの流量制御バルブへの強制閉入力を使って、上流バルブを閉める際には、MFCのバルブも閉めることで応急処置したのですが・・・

 気持ちも軽く昼食を済ませた後、もう一度だけ動作確認をやって帰る事にしたDecoはお客様と実験室に戻りました。そこで再度水素を流したところ、なぜかまた轟音が・・・

「どうして?さっきはうまくいったのに!!」 嫌な汗が背中に伝っていく気がしました。

チェックしてもMFCの流量制御バルブを閉にする回路の操作は問題なく動作しています。

はて?とお客様と首をひねり、バルブの構造図をにらむ事、数分・・・

Decoの頭にあることがひらめきました。

 「しまった!ガスが水素だからだ!」

この大流量のMFCのバルブは、前々回お話したソレノイドバルブと空圧アクチュエータを組み合わせで、流れてくるガスを分岐して、空圧アクチュエータの圧力室に送り込み、パイロットバルブであるソレノイドを開閉することで圧力室の圧を調整してメインの制御バルブを開閉する方法です。

メインの空圧アクチュエータは圧力室のガス圧の高低でゴムダイヤフラムを介して制御バルブを動作させるのですが、今回のガスは水素です。水素はとても小さなガスなので小さな隙間からもリークします。と言うことは、締め切った流量制御バルブのわずかな隙間からでも少しずつ少しずつ下流へ流れ出してしまうのです。

今回、午前中に流量制御バルブを閉じた実験をした際は、短い時間だったのであまり漏れてなかったのが、1時間半ほど昼休み休憩をはさんだ後の確認作業では、既にパイロットバルブからの漏れが少しずつ始まっていたのです。通常のMFCでしたら、それでも制御バルブが全開になることは無いのですが、このタイプは上流のパイロットバルブが圧力室のガス量をコントロールして増減させる圧力室のガス圧でバルブを動かしています。上流のシャット弁を閉めて水素の供給を絶たれた状態では、水素が内部リークして下流側に漏れ出してしまえば、MFC内部の圧力室の水素も抜けて圧が落ちてしまい、制御バルブを全閉状態で保つことができなくなってしまったのでした。

 いやはやDecoは若くて甘かった訳ですね。

ちなみにメーカーさんの仕様書にはちゃんと使用できるガスは空気<AIR>と明記されていました。つまり水素用に販売することをメーカーさんは推奨してはいないのです。 気がつかない内に水素が二次側に流れ続け、どこかで外部に漏れるような事があったら!と思うとゾッとします。

にわか兵法は事故の元です。皆さんも配管制御機器の正しい扱い方、できること、できないことを理解いただいた上で、安全にお使いください!

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第38夜 Decoの恐怖体験をお話しましょう~前編

Decoのように長い年月MFC(マスフローコントローラー)売っていると、ヒヤリ!とする出来事も多々あります。

今回から前後編で大流量MFCの運用で経験したヒャリハットな事例をお話しします。事故は思わぬところで発生します。恥を忍んでお話ししますので、「Decoさん、バカだなぁ~」と他山の石にせず、皆様の安全なMFCの管理運用にお役立て頂ければ幸いです。

某メーカーさんに水素(H2) 1000SLMクラスのMFCを販売した同僚がいまして、どうもうまくいってないということで、頼まれて客先の現場まで状況を見に行った時のお話です。

そのお客様は水素の配管を施工され、実験室の中央にMFCと制御パネルがあり、天井を伝って隣室の実験用ワークに水素を供給しておられました。問題は、「流し始める際に水素が大量に流れて、二次側のワークの圧力が急上昇してしまう」というものでした。

*MFCの用語でこういった現象のことを「オーバーシュート」といいます。

現場でお話を聞いた瞬間に「それはMFCがおかしいのではないな・・・」という気がしていましたが、案の定・・・お客様はMFCに常に流量設定信号に使用したい流量値を入力したまま、上流のバルブだけでガスの開閉を行っておられました。

 これは微少流量用であろうと同じ事なのですが、こういった条件ですとMFCは、流量設定信号が入っているのに、ガスは流れてこないので、設定値>流量出力と判断し、制御バルブを開く方向に制御します。でも、元々ガスは上流の弁で止まっているのですから、MFCの設定値=流量出力になるわけは無く、瞬時にバルブは全開状態になってその状態を維持し続けます。そこで上流側のバルブを一気に開けば・・・配管鳴りで地鳴りのような轟音が居室に響き渡ると大量の水素がDecoの頭上を流れていったのです。もしリークしてたら・・・と思うと、冷や汗どころではありません・・・

 注意:水素は分子量が小さいため拡散性が高いため屋外のような開放系なら安全ですが、リークポイントがあると漏れやすく、閉鎖空間にはどんどん充満していきます。空気中での爆発範囲は濃度4~75%という広範囲であり大変危険で、きわめて小さなエネルギー(静電気)でも着火します。メジャーなガスですが、取扱は慎重に行う必要があります。

 「この使用方法ではまずいですね・・・」

ひとまずMFCの動作原理を説明して、お客様に納得いただき、現場でできる対策を採ることになりました。方法としては、MFCのバルブ強制閉入力を使って、上流バルブを閉める際には、MFC側の流量制御バルブも閉状態にすることで応急処置しました。

「では、テストしてみましょう。」

 ということでバルブを開き、MFCの閉信号を解除して、流量制御バルブを動かしたところ、あの恐ろしい轟音はならず、問題なく二次側のワークも安泰でした。

 「いや~、ありがとうございます!」

 お客様には大変感謝され、またバルブを閉めて昼食を食べとお客様と食堂へ。

MFCの不具合でも無く、トラブル解消も上手くいってお客さんに感謝される、営業としては一番言いパターンです。食堂でお客様にチヤホヤして頂き、上機嫌でお茶をすすっているDecoの頭には、この後の不安など微塵もありませんでした。

 思えばまだDecoも若かったのですね。この続きは次回。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月18日 (木)

第37夜 親亀の上に小亀が乗って・・・バルブ編

大流量MFC(マスフローコントローラー)と言いながら、今までは流量計測用途であるMFMのお話がメインでしたが、今回はMFCがMFCである要素たる制御バルブのお話です。

大流量MFCにとって、一番難しいのは制御バルブの部分になります。

MFCのバルブ構造に関しては既にご説明させていただきました。微少流量用MFCの流量制御バルブは基本的に100SCCM程度のガスを流すものですから、バルブをミクロンオーダーで開けて、ガスを“漏らす”ように流す構造です。これはそのまま大きな流量を供給するのにはかなり難しい構造です。1000SLMといえば1万倍の流量になります。こういった流量では当然、求められる構造も変わってくるのです。

MFCで100SLM以上の大流量制御に使用されるアクチュエータは、ほとんどソレノイドタイプです。

ピエゾはパワーもあり、分解能もいいアクチュエータですが、残念ながらストロークが短く、何段も積み重ねても大流量に使うには難しいのです。その点、ソレノイドは電磁力で引っ張りあげるタイプですから、コイルの巻き数を増やし、流す電流を増やせば、起磁力が大きくなり、なんとかなるのです。

その方式は色々です。
まず、スタンダードな方法では、上記の原理でソレノイドバルブ自体の起磁力を増やします。通常のMFCでは電源から供給される±15VDCのうちマイナス側のみを使ってソレノイドの制御を行っていたのを、大流量ではプラス側も使って、あわせて最大30Vの電圧でコントロールしたりするメーカーさんもあります。消費電流量はかなり大きくなりますが・・・

 ユニークな方法として、ソレノイドバルブと空圧アクチュエータを組み合わせ、MFCに入ってくるガスの圧力を使って空圧アクチュエータを開閉する方法があります。

簡単に言えば、圧力室という風船をつくって、そこに入るガスの量をソレノイドバルブでコントロールします。ガスを大量にいれれば風船は膨らみますね?この風船が空圧アクチュエータを動かす部分だとお考え下さい。つまりこの構造ではソレノイドバルブは空圧アクチュエータの内圧を制御するパイロットバルブとしてのみ動作し、流量制御は空圧アクチュエータが受け持っているのですね。

 その姿はまさに親亀の上に小亀が乗っているようです。

バイパスと言い、この業界の設計者はこのスタイルが好きみたいですね。(Decoが好きなだけかもしれません。)

本方式はバルブのリフト量を稼げ、ガス圧で押すためにパワーもあるため大きな流量に対応できます。しかし、その反面、応答速度は遅くなります。空圧アクチュエータを動かすのには、パイロットバルブで圧力をまず変えないといけないのですから・・・さらにガスにも制限があります。実質上空気のみです。

接ガス部分のメタル化は当然不可(風船ですから)、更に微少流量MFCどころではないバルブの締め切り性能の大幅低下などの問題も抱えています。

次回はそのあたりをDecoの恐怖体験を交えて、詳しくお話しましょう。それでは。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

第36夜 大流量MFCはすごく場所をとります

大流量MFC(マスフローコントローラー)、MFM(マスフローメーター)を実際に使用する際にはいくつか注意事項があります。

 その一つは前後の配管方法です。

特に大流量MFMで顕著ですが、配管施工・設置する際には、マスフローの前後に一定の直管部分が必要になるものが多いです。つまりいきなり曲がりくねった配管で接続してはいけないというお約束があるのです。以下の図はその一例です。

 

Large_flow02

図のように大流量MFMは配管径φDのn倍長さの直管を上流側と下流側に設けて設置するよう要求されることが一般的です。

(このn倍数はメーカーさんによっても若干異なると思いますし、諸条件も様々ですので、設置時は必ず各MFCメーカーさんの取扱説明書を熟読してください。)

実際、やってみると結構大変です。ただでさえビックサイズの大流量MFCの前後にさらに一定の長さは曲げを入れられないことになりますから、空間占有率が馬鹿になりません。

 「本体だけでもただでさえスペースをとる大きなものなのに・・・」

 というため息が聞こえてきそうですが、正確な流量測定にはこれはかかせません。

なぜならこの直管部分こそが、流れを層流化するMFM前段の層流素子の役割を果たすからです。

前に微少流量用MFCでも、内蔵したフィルターで同様の“流れを整える“役割があることをお話ししたかと思います。その大流量版ですね。

流れというものは「曲げ」があると必ず乱れます。

乱れたままMFMに入ってくると、二段階分流の最初の分流段階でいきなりうまく分流できないことになります。

「二段階で行われる分流が正確に行われている」という仮定で分流比から流量を導き出しているバイパス式マスフローの計測結果自体に大きな問題を生じる事になりますので、そのラインに高額な大流量MFC/MFMを設置する意味が無くなりかねません。

 これは二段階式分流方式のMFC/MFMに限ったことではなく、あらゆる流量で本来は発生する問題です。ただ、大流量になればなるほど、正確には配管径と流れる流量の相関により影響が大きいと考えていただいて良いと思います。

 

そしてもう1つ注意すべき点は、固定方法です。

当たり前なのですが大流量MFCは重いです。

本体ブロックがステンレス鋼SUS316の塊であるMFCは、微少流量でも1~2kgありますが、大流量では数kgから、配管径が1インチを超え図のような前後配管を取り付けたバズーカ砲みたいなものでは10kg近くになります。

配管も大口径になればそれ自身で支えることもできないことはありませんが、やはり堅牢な固定板を用いて、壁面にしっかりと固定されるのが望ましいです。

 「実験だから、何回か計るだけだから・・・」

という事もあるでしょうが、流すガスには圧力がかかっています。なにかの事故があったとき、なまじ大流量ラインですから一気に高い圧力のガスが流れる可能性も否定できません。吹き飛んだ大流量MFCというステンレスの塊が貴方を直撃・・・等という惨事が起きないよう、慎重な設置をお願いします。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月15日 (月)

真・MFC千夜一夜物語 第35夜 親亀の上に小亀が乗って

大流量MFC(マスフローコントローラー)のお話と銘打ちながら、今まで延々とMFCのバイパス(層流素子)のお話をしてきました。

「元々は大流量MFCの話ではなかったのかな?Decoさん、脱線しすぎ?」と思われている方もおられるかもしれませんね?

実は「バイパス」「分流」は大流量MFCを理解する為の最重要ワードなのです。

 今までのお話で「センサー管に流れる流量は、管内を層流に保つため、微少流量に制限され、そこに流せない流量は分流しバイパスへ流す。」というお話をしてきました。

そして、その方法は「センサー管と同じ径の管を並べる方法が理想論的だが、現実は流量が大きくなると擬似的な役割を果たす手法で代替する。」というものでした。

つまり、「大流量MFCとはいっても、センサーとバイパスの分流構造は、微少流量用MFCと同じであり、大流量はセンサーに対するバイパスの分流比がとてつもなく大きくなるので、より分流構造に知恵を使わなくてはならないMFCである」という事なのです。

MFCのセンサー、バルブとご説明してきて、本来はバイパスの単独の説明となるのが、MFC講習会などの定石なのですが、どうも講習会終了後のヒアリングでも、結局バイパスの役割は?という項に関して、ご理解頂くのが難しいようなので、実際にバイパスを多用する大流量MFCと絡めてお話しをさせてもらっています。

さて、この考え方でフルスケール100~300SLM程度のMFC/MFMはなんとか作っていけます。(メーカー、機種により構造上、難しい場合もあります・・・) 

といっても決して簡単ではなく大型のバイパスを設計したり、その設置方法を工夫したり、センサー管の圧力損失を調整して、センサーに流れにくい構造を作る事でバイパスへの分流比を再設定する・・・等々、色んな工夫が必要です。

それ以上の大流量に関して、「MFCで無理なら、計るだけのMFMでもいいからもっと大流量を!」という声は現実に存在するのですが、それでもこのクラス以上の流量ラインナップを持つメーカーが世界的にも数社しかないことからも、その難しさが推して計れる気がします。

(世界に数社しかない理由はもう一つあって、大流量はMFCのメインターゲットである半導体製造プロセスでは必要ないという非常に実に泥臭い理由もあったりします・・・)

Decoが過去にお付き合いしたことのあるメーカーさんは非常にユニークな発想でこの問題を解決されていますので、ご紹介します。ただ、これが全ての解というわけではありませんので・・・

 このタイプは、下図のように太い配管の上に乗ったMFMで構成されています。

 まさに親亀の上に子亀が乗って・・・ですね。


Large_flow01r

 下部の太い配管は、ただの直管ではなく、中に層流素子が仕込まれており、その前後に直角方向に配管が伸びてMFMと繋がるようになっています。

配管を流れてきたガスは、まずバイパス1手前で分流され、大部分のガスはそのまま直管部分に流れます。分岐された一部のガスは、次はバイパス2の前で分流され、大部分はバイパス2を、そしてその一部がセンサー管を通過する形になります。

つまり「二段階分流」を行うことで、センサー管内を流れるガス量を制限して、層流化しているのでした。ある意味、ストレートな発想でおもしろいかと思います。

センサー管とバイパスで構成される熱線式タイプのMFC/MFMは、「センサー管内を層流にする」という制約で縛られるため、大流量になればなるほど大掛かりな分流構造が必要になります。

でも大掛かりなのはMFCの構造だけではなく、その周辺もそうなのです。次回からは大流量MFC取り扱い方法のお話です。それでは、また。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第34夜 MFCについているフィルターを当てにしてはいけません

MFC(マスフローコントローラー)のセンサー管とバイパスの「分流」に絡んで「これはちょっと違うのだけどなぁ?」という認識があるようですので、ここで取り上げさせてもらいます。

Decoが営業時代のやりとりです。

お客様:「そちらのMFCにはフィルターはついていますか?」

Deco:「付いていますよ。」

お客様:「じゃあMFCの上流にフィルターはいらないね。」

Deco:「いえ、いります。必ず付けてください。」

お客様:「?(なんで?付いているって言ったじゃないか・・・)」

 フィルターは配管内の異物、ゴミをトラップして、下流に流さないようにするもの・・・それがMFCに内蔵されているなら一石二鳥!となりそうなものですが、何がいけないのでしょうか?

一部のMFCでは入口継手の奥、センサー管とバイパスの分流する前にフィルターが設置されているものがあります。このフィルターは確かに1mmφ以下の細管であるセンサー管とバイパスに上流からゴミが入らないようにする役割もあるのですが、それはあくまで補助的なものなのです。

本来の設置目的は、配管状況(特に直前の曲がり)や圧力の変動でMFCに入り込んでくる流体の流れが乱れていた場合に、その流れを整える「整流」効果なのです。バイパスがセンサーに層流を作るための素子なら、このフィルターは層流素子に層流を作るための素子みたいなものなのです。

Filter_in_mfc

このフィルターに大きなゴミが付着してしまうと下図のようにフィルターを通ってせっかく整流されるはずの流体が、逆に大きく乱れてしまうことになりかねません。

 

Filter_in_mfc2


この状態では、メーカー出荷時のセンサーとバイパスの分流比が崩れてしまったり、センサー管内部に流入するガスの流速が上がり層流にならなくなってしまったり、といった悪い影響が懸念されます。これでは正確な流量測定はおぼつかなくなり、いつの間にかMFCの制御している流量が使い始めたころより外れてしまう・・・といった現象が起きてしまうかもしれません。

それに一体型はお得に思えますが、そもそもフィルターの交換頻度とMFCのそれは異なるはずです。いちいちフィルター交換の都度、フィルターより高額なMFCを交換するなんてナンセンスですよね?

以前、ブラウン管TVとVHSテープのビデオデッキを一体化したデレビデオという商品がありましたが、ビデオは回転系部品が多いため、TV部より早く故障して、その都度修理に出すとTVも見られなくなってしまうという苦情(というかお客様も笑い話として話されていたのですが・・・)を家電メーカーにいたころ、お聞きしたことが思い出されます。

あと、この話以外によくフィルターで質問を頂いたのがこれです。

 「MFCメーカーとしての推奨されるフィルターは?」

 Decoの場合、センサー管が細管であること、バルブオリフィス系は使用されるフルスケール流量が小さいほど極細であることを、具体的な寸法とともにお伝えして、フィルターメーカーさん、または配管施工会社さんに助言を仰がれるようお願いしていました。

 やはり餅は餅屋です。今、どのような配管システムで、どんな流体を流されていて・・・といった細かい状況を知らずにうかつな話をさせて頂くわけにはいかないのです。

フィルターの場合、粒径の小さなゴミをトラップするようにすると当然フィルター自身の圧力損失が増大します。配管ラインのガス供給圧力の上限が限られている場合は、特にライントータルの圧力損失と、想定されるゴミの粒径に応じたフィルターを選定してくださいね。

 では、次回はやっと大流量MFCのお話です。 それでは。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月12日 (金)

真・MFC千夜一夜物語 第33夜 理想をとるか?現実をとるか?これが問題です

MFC(マスフローコントローラー)のセンサー管に流れる流量より大きな流量のMFCを作るには、センサー管と同じ太さのバイパスを何本か設ければいいというお話です。

じゃあ、それが何十万本になっちゃってもいいの?というと、さすがに20万本近い細管を数えて詰める仕事をしなさい!と言われたら実際の作業としてはつらいですね。

そこはMFCメーカーさんも考えます。

 要はある流量を流す組み合わせで、センサー管に流れる流量とバイパス(層流素子)部に流れる流量の比率が常に一定になればいいのだから、真正直に同じ太さの管をたくさん用意しなくても、同じような性能を出せる代用品を探せばいいじゃないか?という発想がでてきました。

例えばそれは、焼結フィルターのような流体がある抵抗を受けて通過するものであったり、または細かいピッチで凸凹の断面にエッチング処理をしたステンレス板を丸めたものだったりしました。

 少し脱線しますが、実はこのバイパス部分が非常に細い流路で構成される構造は、MFCの主戦場である半導体製造工程で、プロセスが進化するにつれ忌避されるようになりました。なぜなら複雑で狭い流路構成は詰まりやすい上に、パージ特性が悪くなりガスの置換に時間がかかってしまうからなのです。

半導体のようにいくつかの危険なガス種を切り替えてチャンバーに導入する行程を何度も何度も積み上げていく製造工程では、1回のパージ効率の悪さが積算されて装置のターンアラウンドタイムに影響を及ぼすことになるのです。

 それに対して提案されたバイパス形状の中には、断続変化するR形状で構成されたステンレスの削りだし砲弾のようなパーツを使って、流路の断面積を刻々と変化させることである圧力損失を産み出し分流比を決定する・・・そんな工夫をされたものもありました。

                       

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また、メーカーによっては、センサー管にも細工をして、微少流量のものよりセンサー管を長くしたり、入り口を細くしたりしているところもあります。センサー管を長くor細くすることにより、センサー管の流路抵抗を増やし、同じバイパスとでも「分流比」を変化させることが可能だからです。

複数種のセンサー管とバイパスの組み合わせで、バイパス側により多くの流量が流れる組み合わせを見つけ出すことが狙いなのです。

ただ、こういった代替品や分流比をいじるやり方は、温度、圧力、前後配管長さ、実際に使用されるガスとメーカーが校正に用いたガスとの特性の差等の条件により、常に理想的なセンサーとバイパスの分流比を維持できない場合もあり、精度、再現性でスペックを発揮できない原因になることもあります。

その為か?他の理由か?こういった代替品やセンサー管への工夫を一切用いず、あくまで原理原則に忠実にやっているメーカーさんもあります。どちらがいいとも言いにくいのが本音ですね。

さて次回はセンサー管とバイパスの「分流」に関して、もう少しお話します。それでは。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第32夜 交通渋滞したらバイパスを作ればいいのですよ

MFC(マスフローコントローラー)に関して、「層流を作るための素子」である「層流素子」のお話です。

 前回のお話で「センサーの細管内を臨界レイノルズ数以下の状態に保て流量というのは、自ずと制限されてしまい、10SCCM以下になってしまう」というお話をしました。つまりセンサー管だけでは、多くてフルスケール10SCCM用のMFCしか作れなくなってしまう訳で、これでは困りますね。

 そこで考え出されたのが、バイパスを作る事でした。

身近な例ですと、道路幅が狭い国道**号線に車の流れが集中して渋滞が定常的に発生して交通問題かすると、新しく広い車線の多い国道*号線バイパスってできて分岐させますよね?それと似たようなものです。

 理論上もっとも簡単な分流は、センサー管と同じ口径のパイプを設置して流れを分岐し、そこに流量をバイパスさせる方法です。

下の図でご説明しましょう。この図は、特定のメーカーの構造を示したものではなく、あくまで説明用の架空例であることをお断りしておきます。図では計算を簡単にするために仮にセンサー管に流す流量を5SCCMと仮定しています。

1の場合、20SCCMMFCを構成する場合の組み合わせになります。

【センサー管5SCCM】+【バイパス管5SCCM×3=15SCCM】=20SCCMとなります。


Bypass1

 

では、100倍の流量である2SLM2000SCCMの場合はどうなるか?というと図2になります。


Bypass2

 


案外簡単なものですね?じゃあ、この調子で1000SLMMFCを作るとすると・・・

1000SLM1,000,000SCCMだから、センサー管の分5SCCMを引くと999,995SCCMをバイパスさせればいいので、バイパス管の本数は999,995SCCM5SCCM199,999本か・・・

 え~~~っ!19万9999本!!

 本当に1台のMFCにそんなに入っているのでしょうか?工場の製造担当さんは層流素子の工程でバイパスの本数数えるだけで大変ですよね?

一体どうなっているのでしょう?

 このお話の続きは次回。それでは。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月 9日 (火)

真・MFC千夜一夜物語 第31夜 「層流」を作らなくては、流量は測定できない!

MFC(マスフローコントローラー)のバイパス(層流素子)に関するお話です。

 バイパス(層流素子)というパーツは、一般的にはMFCの入口側、流量センサーの下部に位置していて、入ってきた流体をセンサー管と分流しています。わざわざ分流する意味は、センサー管に「層流」を作る為だと、前回お話ししました。

層流を作る目的とは何でしょうか?

それは層流が生じる状態が、流量を測定するのに「最適な状態」だからなのです。

では、流量を測定する上で「最適な状態」とはなんでしょうか?

 ここでマスフローに使われる熱線式流量センサーの原理に立ち返っていただくことになるのですが、測定原理のお話をした際に、以下のご説明をしたかと思います。

 「・・・上流側ヒーターと下流側のそれとの間に生じた温度差は、流れる気体の質量流量に比例することを利用して流量を測定する。」

 ここで説明されているヒーターの温度差が質量流量に比例する関係が成立するのには、実はひとつの絶対条件があるのです。

それは「センサー管内の流体の流れが層流であること」なのです。

では、「層流」という言葉をご説明しましょう。この対になる言葉は「乱流」です。

 簡単な例えをお話しますと、小川に清流が流れている状態を思い浮かべていただければと思います。ここに葉っぱ(昔は笹船というのがありましたが)を流してみると、流れが穏やかなとき(=流速が遅いとき)は、姿勢を乱さずまっすぐ流れていきます。ところが流れが激しくなると(=流速が速いとき)、葉っぱはクルクルと回転したり、蛇行したりしながら流れていってしまいます。

前者の状態が「層流」を表し、後者の状態が「乱流」となります。

今度は図で見てみましょう。

左側が層流状態、右が乱流状態です。

 

130409_02

 この流れに墨汁を流してみると、層流状態では、まっすぐ一本の線と化して流れていきます。この時、流速分布は中央部を頂点とした放物線状になります。

それに対して流速が上がって乱流状態になると、墨汁が乱れて拡散していきます。この状態の時、流速分布は中央部で均一で側壁部で急激な速度l勾配が発生しています。

 これらの状態は「レイノルズ数(Re)」で表現され、層流から流速が上がって乱流になる状態を「臨界レイノルズ数(Rec)」で表します。

 レイノルズ数(Re)=(断面平均流速(v)×円筒の直径(d))/動粘性係数(ν)

 

熱式センサーの原理を考えて頂ければ、これで乱流状態がいかに好ましくないかはおわかり頂けるかと思います。

「流体により上流側ヒーターからから下流側へ熱を運ばれる・・・その移動した熱量から流量を算出する」には、整然と墨汁が流れてくれる状態でないと「熱量」と「流量」との関係が崩されてしまいますね。

 センサー管の外周に巻かれたヒーターから与える熱を確実に流体に伝えるために、MFCのセンサー管は内径0.40.8mm程度の細い筒に設計されています。

当然、この細管内の流れを臨界レイノルズ数以下の状態に保てる流量というのは、自ずと制限されてしまい、10SCCM程度の微少流量しか流せません。しかし、それではフルスケール10SCCM以上のMFCは作れないことになってしまいます!ましてや1000SLMの大流量なんて夢のまた夢です。

 ここで「層流を作るための素子」の存在がクローズアップされてくるのです。

お話は次回に続きます。それでは。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第30夜 大流量MFCの秘密=バイパス(層流素子)とは?

MFC(マスフローコントローラー)のお話をさせて頂いている真・MFC千夜一夜物語。
今回から大流量MFCの構造に関してのお話です。

 大流量MFCのお話を始めるに当たって、もう一度MFCの基礎についてのお話を繰り返させていただきまくことになります。この物語の「流量センサー」に関してご説明している記事に戻っていただき、繰り返し読んでいただけるとわかりやすいかもしれませんね。

 MFCの流量センサーの仕組みは以下の通りです。

「径の細いセンサー管2対のヒーターが設置され、同じ温度に制御されている。

そのセンサー管に気体を流すと、上流側のヒーターの温度は奪われて下降し、逆に下流側は上流側のヒーターから奪われた熱が加温され上昇する。

この時、上流側ヒーターと下流側のそれとの間に生じた温度差は、流れる気体の質量流量に比例する。

この原理を利用して流量を測定するのがMFCの熱式流量センサーの仕組みである。」

 

では、この物語で既に何度も登場しているMFCの構造図を見てください。

130409_01

左側からMFCに入ったガスは全部流量センサーに行くのではなく、もう1方向へ分岐していることがわかると思います。このもう一方の分岐=流量センサーの真下の部分に「バイパス(層流素子)」というキャプションが付いているのがおわかりになるかと思います。その名の通り、バイパスが設けてあるのです。

 前回、MFC流量センサーの基礎をご説明する上では割愛した箇所なのですが、こと話が大流量MFCに及んでくると、この部分が非常に大きな役割を果たすことになりますので、この場でご説明いたします。

 前にお話ししましたが、巻線式流量センサー式MFCは、必ずしもその中を流れる流体の全流量をダイレクトに測っているわけではありません。どんなに大きくな流量用のMFCでも、そのセンサー管に流れる量は10SCCM程度の微少流量なのです。

残りの流量は分岐した「層流素子(バイパス)」に流れています。

どちらかというと流量センサー管が、全体のほんの一部の流れをサンプリング測定しているような構成です。

 なぜ?このような構造なのでしょうか?

 その答えはバイパスの別名「層流素子」という言葉がいみじくも表現しています。

「層流素子」を「層流を作るための素子」と考えて頂くと、正解に近づけます。

この部分は、実は層流素子自身に「層流」を作るためではなく、相棒である流量センサー管内部に「層流」を作るために、過剰で余計な流体を「バイパス」させている部品なのです。

 「層流ってそもそもなに?」

「なぜセンサー管内に層流が必要なの?」

といったご質問が噴出してきそうですね。

 次回以降でお答えしていきますね。それでは。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

 

2013年4月 8日 (月)

真・MFC千夜一夜物語 第29夜 僕達って何もかもがビックサイズ?

MFC(マスフローコントローラー)の用途は多岐にわたりますが、その中に大流量制御を必要とする用途が種々あります。

ここで言う大流量とは、50SLM以上の流量域のことです。(MFC以外の流体制御の世界では、50L/min程度は大流量ではないという世界あります。)

なぜ50SLMで区切るかといいますと、MFCの構造が大きく変わる節目が、このあたりの流量レンジからだからです。

では、どこが変わるのでしょうか?

具体的には、流量制御バルブとアクチュエータ、バイパス(層流素子、分流素子)、MFCのボディサイズ自体と、MFC前後に配置された直管部分の有無です。

 そう言われても実際に1000SLMレベルの大流量MFCを見たことがない方々にはイメージが沸きにくいかと思います。

 こういった大流量用MFCで人間の目に訴えるのは、やはり見た目=物のサイズです。比較しますと通常のMFC1/4インチ配管で接続されたお弁当箱サイズなのに対して、大流量用は1/23/4インチの配管接続です。

絵で描きますと、こんな感じです。

130408_01

 そして、もっと大きな流量になると、それ以上のサイズ・・・太く長い配管というより太い筒の付いた重たい金属の塊です。まるで戦争映画に出てくるバズーカ砲と言っても過言ではない大きさなのです!

 昔の話で恐縮ですが、Decoがまだ若かりし日、真夏にレンタカーに2台の大流量MFCを積んで、1日がかりで納品に行った事があります。前後の直管部分を入れると、普通のワゴン車ではカーゴルームからはみ出してしまうくらいのもので、重さも一人で2台を担ぐのは悲鳴をあげるくらいのものでした。

 暑い中、ヒーヒいいながら積み込み、製品にもしもの事がないように慎重に運転して、やっとお客様の工場に着きました。

ところが、たまたま構内で車を動かせない時間帯だったのか?理由ははっきり覚えていないのですが、とにかく駐車場から現場まで、とても大きな工場だったのなんと1kmくらい!2本のバズーカ砲を担いで歩く事になりました!途中から大汗をかいて、半ば意識が朦朧とする仕事でした。お客さんが気づいて台車を持って来て下さらなかったら、脱水症状で倒れていたかもしれませんね。

 それでもがんばったのは、お客様がお困りで「なんとかその日に品物を届けなければ!」ということもあったのですが、実は大流量MFCは、その大きさに比例してお値段もなかなかいいものでして・・・若き営業マンDecoはそれに目がくらんでしまっていたのですね!

さて、そんなサイズも値段もビックサイズな大流量用MFC。

次回からは、その構造に秘められた工夫の数々と、不思議をお話ししましょう。それでは。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月 3日 (水)

真・MFC千夜一夜物語 第28夜 層流素子が不要なマスフロー

MFC(マスフローコントローラー)に関しての四方山話をさせて頂いている真・MFC千夜一夜物語です。

本来、このブログでは、過去の連載「MFC千夜一夜物語」及び「新・MFC千夜一夜物語」の再編集・修正加筆を施した「リマスター版」と位置づけておりますが、大人の事情で今回の28夜は完全新作です。

 次回から大流量用MFCに関してのお話をさせて頂くのですが、今までご説明していなかった「層流素子(バイパス)」という流量センサーの補器ともいえる部分の構造に触れる連載になることは前回お話ししました。下の図を見て頂くと、熱式流量センサーの下部にバイパス(層流素子)という部分が存在しているがわかるかと思います。

130403_02

                       

 

この部分の詳細は次々回からご説明させて頂くので、ここでは簡単に。

熱式流量センサーにバイパス(層流素子)が必要な理由は、センサーが入ってきたガス全てを計測することができないからです。

第9夜でご説明した巻線を用いた熱式流量センサーの原理で計測できる最大流量は、だいたい10cc/min程しかないのです。それ以上の流量が流れ込んでもセンサー出力は飽和してしまいます。

そこで、大きな流量を担当するMFC/MFMではバイパス(層流素子)を使って、センサーに流れる流量との分流比率を一定にしながら流してやる必要があるのです。

 でも、世の中には必ずしもこのバイパスを必要としないMFCもあります。

 その1は、先ほどの説明をお読み頂ければおわかりかと思いますが、センサー管に流してもいい流量以下のフルスケールレンジで構わない微少流量タイプです。この流量レンジはメーカー、センサー方式、MFCの構造により異なりますので一概には言えませんが、いわゆる微少流量と言われるレンジの事ですので、あまり一般的に多用される事はありませんが・・・

その2は最近10年で普及したチップセンサータイプのMFCです。このタイプは、MEM技術で製作した小型ヒーター、熱センサーをチップ上に構築したものです。

巻線型との構造の比較を図にしてみました。

130403_01

ガスに直接センサーを接触させることで、巻線のようにセンサー管の外から熱を伝えるタイプよりはるかに感度のいい流量センサーを形成していますので、流入するガスの全量計測が一応可能です。

オーブンで暖まった食器を取り出す際に、素手で触れるか?それともオーブンミットを装着して触れるか?の差と考えて頂ければわかりやすいかもしれませんね。

ただし、このタイプはチップセンサーが腐食するような気体や、チップセンサーに付着堆積するような材料には使えないという弱点もあります。

 こういった例外はあるのですが、世の中にあるMFCの大半は、バイパス(層流素子)をも持っています。そしてそれが一番活躍する大流量MFCです。

次回からは、そのご説明に入ります。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

2013年4月 1日 (月)

真・MFC千夜一夜物語 第27夜 MFCは色んな用途で使われているのです

MFC(マスフローコントローラ)の用途に関してお話の2回目です。

先日お話した半導体も含めて、ざっと上げてみましょう。

 半導体製造

 液晶/PDP/有機EL製造

 LED製造

 ディスクメディア(CDDVDHDD)製造

 環境(ガス製造、排ガス処理)

 分析(ICP-MASS、原子吸光、ガスクロマトグラフ・・・)

 エネルギー(原子力発電、燃料電池、太陽電池・・・)

 宇宙開発

 燃焼(炉、バーナー、溶接)

 真空蒸着、スパッタ

 コーティング、研磨(レンズ、ミラーの保護)

 工具(超硬工具)

 医療、製薬

 

結構色々とあって、驚かれましたか?

実は産業ガスを使用する用途では、ほとんどといっていいほど、MFCは使用される可能性があるのです。

当然、他の形式の流量計、例えばガラス管に球が浮くフロート式流量計が用いられている場合や、流量ではなく圧力で管理するパターンもありますので、必ず上記用途でMFCが使用されているか?といえば100%そうではありません。コスト面から、MFCを搭載していた機器が、ローコストな他の方式に設計変更されることもあります。

 

これらの用途で、前回お話しした半導体関連以外に使用されるMFCは、多種多様にありまして、流量がF.S.1SCCMの微少流量から1000SLM以上の大流量、圧力も高圧から低圧、大気圧、真空の領域まで、ガス種も一般的な不活性ガスから、特殊高圧ガスまで様々です。

特に流量レンジは、半導体用のMAX50200SLM程度なのに対して、1000SLMを軽く越えていたりします。こういった大流量用のMFCは基本原理こそ今までご説明してきた「熱式流量センサー」「制御バルブ」の組み合わせですが、その応用編、大流量用特殊構造といった成り立ちになります。

 こういった大流量用のMFCに関してのお話をさせて頂くに際しては、今までご説明していなかった「層流素子(バイパス)」という流量センサーの補器ともいえる部分の構造に関するお話も並行してご説明させて頂こうと思います。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第26夜 半導体産業の動向に泣かされるMFC

MFC(マスフローコントローラ)のバルブ周辺のお話をして参りましたが、前回で一段落です。次の技術的なトピックスに移る前に、いつもの技術談義と趣を変えMFCのマーケットの事に関してお話ししましょう。

MFCのメインユーザーは半導体及びその応用技術である電子部品向けが圧倒的に多いというお話しをしました。ここでいう応用技術には液晶、LED、メディア(HDD)、太陽電池まで多彩に存在しています。実に8割以上のMFCがこの分野で使用されているのです。

 半導体といっても名前は知っていても、実物をご存じない方もおいでだと思います。イメージとして電気製品の中にある基板に乗っている“黒くてムカデのようなたくさん銀の足がでた部品”を思い起こして下さい。

この中には抵抗、トランジスタ、ダイオードのような回路素子が超小型化されて詰め込まれています。

半導体製造工程では、MFCで制御された微少な流量のガスをチャンバー内で化学反応させることで、膜を付ける、削る、を繰り返して、これらの素子とそれを繋ぐ微細な配線を何層にも堆積していきます。この配線の幅はmmではなくμm以下の世界で展開されていますから、肉眼では見えないサイズの無数の素子と配線が、あの黒いムカデには秘められているのですね。

しかも半導体IC(集積回路)はLSI(大規模集積回路)からVLSI(超大規模集積回路)、ULSI(超々大規模集積回路)・・・と、どんどん1個当たりに搭載される素子数が増えて行く毎に、MFCに求められる性能は高くなり、販売量は増えていったのが歴史です。

MFCが半導体で好まれる理由の一つは「遠隔制御、非接触流量測定」という特性です。

半導体製造プロセスでは、使用するガス種が一般で使用されるそれよりも危険な特殊高圧ガスを使用する事が多く、漏れたら大惨事を起こす可能性が高いからです。SiH4(モノシラン)に代表される空気中に漏れ出たら自然発火(つまり火を付ける必要が無く、いきなり火がでちゃいます)するようなガスはメタルシールで高いリークレートの保証をもったMFCでないと危険だからです。

 *その昔、大阪大学でSiH4に絡んだ爆発事故が発生し、尊い人命が犠牲になっています。実際は決して混ぜてはいけない可燃性ガスSiH4と支燃性ガスN2O(亜酸化窒素)が、パージラインの逆止弁のOリングの腐食からリーク逆流して発生しました。

 こういった半導体関連部品は、パソコン、TV、Bluerayレコーダー、スマートフォン・・・逆に入っていない物を探すのが難しいくらいに色んな電化製品に搭載され、一般に普及しています。

また、家電以外に大きいのは自動車で、特に最近の車種(ハイブリッド等は顕著)には必ず搭載されエンジンコントロール全般、ナビゲーション、ETC、エアコン等の制御等に大量に使われているのです。

リーマンショック後の世界不況でアメリカのビック3が深刻な経営状況に陥った途端に、海を越えた日本の半導体メーカーの業績も悪化したのはそれを象徴する出来事でした。

 では、半導体用途以外の残り2割はどんな用途があるのでしょうか?そのお話はまた次回に。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

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